私の分身?のさくらもちちゃんとレオくんの七夕のお話。7月6日にいくつかのシーンを思いついたから、できたら7月7日に書けるところまで書いて当日に投稿しようかなって思ってたんだけど、その日からすごくハピなるなこと(いつか書くかもしれないけどまだわからない)に夢中になってたら、金曜日になっちゃった。木曜日の夜から書いていたら、いつの間にか朝になってるけど、書きながら何度も読み返して何度も泣いてるよ…🥲 レオくん、一生幸せでいてほしいよ…。


どんなに離れてても心は 繋がってるよ いつでも

― Prizmmy☆「Butterfly Effect」


「礼拝堂で七夕イベント!素敵です〜」

うっとりした表情のレオくんが、お願い事をするように両手を合わせて言う。四ツ谷の商店街の会合から帰ってきた聖さんとジュネさんから、セプテントリオンのみんなが聞かされたのは、7月7日の七夕イベントの企画だった。商店街全体で7月7日にかけて七夕に合わせたイベントが行われる。大きな笹を飾りたいが、商店街ではそのためのスペースが見つからない。そこで、エーデルローズの礼拝堂をそのためのスペースとして借りたい、セプテントリオンさんにもぜひイベントに参加してほしい、という話だった。普段は参加しない会合にジュネさんも足を運んだのは、それが理由だった。イベント参加者のみんなが、七夕のイベント中に礼拝堂の笹の葉に短冊の願いを飾りにくるという。

「礼拝堂で行うイベントの詳しい内容については、皆がしたいことを話し合って決めてほしい。必要なことがあれば何でも協力する」

聖さんのお願いに反対する人なんて誰もいなかった。みんなで話し合った結果、商店街を利用した人にはお店から短冊の引換券を渡してもらい、礼拝堂でセプテントリオンのメンバーが7色の短冊を直接手渡すという企画になった。さらに、短冊の手渡しにはジュネさんも参加してくれることになった。もちろん、イベントの最後には、七夕だけのスペシャルプリズムショーも行われる。

その後、プリズムショーのセットリストや衣装を決めたり、短冊の素材やフライヤーのデザインを考えたり、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

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さくらもちがそのイベントの存在を知ったのは、たった1日前の7月6日だった。お気に入りの図書館で読書をして、本を借りて帰ろうとしたとき、図書館の建物の入口にある、掲示板の1枚のフライヤーが不意に目に止まった。特に気にせず前を通り過ぎるつもりだったけれど、フライヤーの隅に描かれた、かわいい虹と星のイラストに心が惹かれたみたいだった。

『あなたの心の煌めき、聞かせてください⭐』

大きな笹の葉と短冊が描かれたそのフライヤーは、翌日の七夕イベントを知らせていた。

「そっか、もう7月なんだっけ」

最近ずっと沈んでいたさくらもちの心には、季節のイベントが意識されることはしばらくなくなっていた。きれいな絵と素敵なメッセージに心が少し照らされたような気がしたけれど、その下に書かれた主催者の名前「エーデルローズ セプテントリオン」を見たとき、心にはまた影がかかってしまったようだった。メンバー一覧の中に久しぶりに目にした「西園寺レオ」という名前をしばらく見つめると、寂しそうな表情で建物から出ていった。

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「あれ、どうして私、こんなところにいるんだろう……」

さくらもちはつぶやいた。今日は7月7日。気がつくとそこは、四ツ谷の静かな一角、エーデルローズの寮のすぐ近くの通りだった。すぐ先に白い尖塔が見える。今日の七夕イベントの会場、エーデルローズの礼拝堂の建物だ。でも、今は午後9時、だいぶ日が長くなったけれど、あたりはすっかり暗くなり、街は静かに眠りに就こうとしていた。夕方までのイベントは、もう完全に終わっているはずだ。

今日は1日お休みを取って、午後からカフェで昨日借りた図書館の本を読んでいた。「オーバードーズ」をテーマとした本で、胸に消えない苦しい気持ちを消したくて、生きるためにどうしようもなくなってオーバードーズしてしまう子たちの経験が書かれていた。その気持ちに深く共感して、さくらもちの気持ちも苦しく沈んでいた。

七夕イベントに行くつもりはなかった。もうきっと会うことはできないだろうと思っていたから。記憶をたどると、カフェを出てから、ぼんやりともの思いにふけりながら普段使う電車に乗っていた。けれど、その後降りたのは、最寄り駅ではなく四ツ谷駅だった。何度も歩いたエーデルローズへの道はまだ記憶に深く刻まれていた。さくらもちの無意識は、昨日見た「西園寺レオ」という名前を忘れられなかったみたいだった。ううん、忘れられるわけないよ。今頃来てももう会えないはずなのに、心はその輝く星に救ってほしいと望んでいた。

通用門にたどり着くと、そこには七夕イベントのポスターと礼拝堂の入口への案内板が置かれていた。施錠された暗い門を想像していたけれど、門はまだ開かれていた。メインイベントの時間は終わっていたけれど、礼拝堂は22時まで開かれているみたいだった。礼拝堂へ続く道に小さな光が灯されている。看板を前にしばらく佇んでいたさくらもちは、その光に誘われるように、おそるおそる礼拝堂へ向かった。

扉をあけて中に入ると、礼拝堂の中には誰もいなかった。カチャリと扉が閉まると、静けさに包まれた。礼拝堂の祭壇の前には、さまざまな色で明るくライトアップされた大きな笹が置かれていた。

その葉には、色とりどりの短冊が飾られている。セプテントリオンの七色の短冊、そして、雪のようなラメの入った白の短冊。まるで虹色のプリズムに照らされているようだった。背景には美しいステンドグラスもライトアップされている。空気が済んで、透き通っているみたい。

短冊に近づいて、みんなの願いを読んだ。

『ずっと勉強してきた試験に合格できますように』

『子供の頃からの夢が叶いますように』

『お友だちの病気がよくなりますように』

『なかよしだった会えなくなった人に、いつか謝れますように』

『好きな人と両想いになれますように』

『……』

一人ひとりの気持ちから、その人の心を想像した。たくさんの人が、たくさんの願いを持って生きているんだって思うと、胸が一杯になった。

それぞれの人生が、星のように煌いている。明るい星、暗い星。大きな星、小さな星。温かい桃色の星、冷たい水色の星。そのすべてが、夜空を彩っている。

私の星は、どんな色で光っているんだろう。私の願いは、どんな願いなんだろう。

イベントの短冊はもう残っていない。でも、かばんの中にお気に入りの便箋があるのを思い出した。かばんを開き、桜色の便箋を袋から一枚取り出して、ペンケースから取り出したカッターで長方形に切り取る。うん、いい感じ。ペンケースから濃いピンク色のペンを取り出す。

私の願いごと。最初に考えたのは自分だけの願いだった。

『レオくんにまた会えますように』

でも、やっぱり自分中心じゃなくてレオくん本人が幸せになってほしいと思った。

『レオくんがずっと幸せでありますように』

だけど、みんなの願いが煌いているのがきれいだって思ったらね、レオくんが生きているこの世界のすべての人が幸せになってほしいって、世界全体がハピなるに包まれてほしいって心から願ってしまったの。

だから、私の願いは――

『みんなの願いが叶って みんながもっとハピなるに生きられますように ―― さくらもち』

さくら色の短冊に願いを書くと、さくらもちはそれからしばらく考え込んでいた。そして、短冊を裏返して、さらに文字を書き込む。短冊を笹に飾り、その上にアクセサリを留めた。

「これで、いいんだよね……」

しばらく短冊を祈るように見つめてから、名残惜しむように目を離したさくらもちは、そのまま礼拝堂を後にした。

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一日中、忙しく働いていたみんなはそれぞれの部屋に帰り、もう眠ってしまった頃だった。シンくんだけは、前からの約束で、今日はイベント後にルヰくんのお家にお泊りに行ってる。今日は本当に充実した一日だったなぁ。

お部屋で夜のリラックスタイムをゆっくり過ごしたレオくんも、心地よい疲れを感じて、そのままベッドに入ろうと思っていた。でも、窓から天の川の煌めきを目にしたとき、ふと、何かに心を惹かれたような気がした。もう一度、礼拝堂の笹を見に行きたくなった。

礼拝堂に来ると、扉を開けて、中に足を踏み入れる。誰もいない礼拝堂には、厳かな雰囲気を感じた。レオくんは、桃色のふんわりしたかわいいネグリジェを着ていて、表情もリラックスしてふんわりしている。笹を照らすライトの淡い光が、レオくんの背中に光る羽を作っているように見えた。

時刻はもう22時過ぎ。礼拝堂の中には誰もいない。夜に礼拝堂を閉じてくれるはずの山田さんの姿も見えなかった。外の門の施錠や看板の片付けをしてくれているのかな。

日中ずっと一緒に過ごしていた、七色に彩られた笹を見つめる。何度見ても素敵だなぁ。短冊の1つ1つに込められた願いと参加者の顔を思い返す。一瞬、ふんわりとした優しい香りがしたような気がした。奥の片隅を見ると、そこには優しいさくら色の短冊がかかっていた。見覚えのない短冊だった。どんな願いごとが書かれてるんだろう?

そこに書かれた願いを読んだレオくんの胸には、優しく暖かな気持ちが広がった。

その短冊の紐の先に目をやると、そこには変わったプリズムストーンが1つ、留められていた。短冊の色に近い淡いさくら色で、見る角度によって乳白色にも見える。ハートではなく、桜の形をしたストーンだった。レオくんは目を見開いた。

「え、オリジナルストーン?」

オリジナルストーンは、その持ち主だけに与えられる特別なプリズムストーン。もしオリジナルストーンを失ったら、二度とプリズムショーをすることはできなくなってしまう。そんな大切なものを一緒に飾るなんて……。

その短冊を裏返すと、便箋のように罫線が引かれている。そこに、小さな文字でメッセージが書かれていた。

「レオくん、あなたのことが大好きです。もしよかったら、私のストーンをお守りにしてくれませんか?」

レオくんはしばらく、真剣な表情でその言葉をじっと見つめていた。

やがて、短冊からストーンを外すと、それをネグリジェのポケットに入れてやさしくぎゅっと握り、そっとつぶやいた。

「きっと、幸せになれますよ……」

レオくんの手の温もりが、さくら色のストーンに伝わって、ほのかに色づいた。

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